
研究者の一日
研究者って何やってるの?という質問にお答えします。
目次
はじめに
研究室の様子
実験
データー解析
ディスカッション
論文を読む
論文を書く
グラントを書く
ラボミーティング
ジャーナルクラブ
学会発表
アフターファイブ
給料
研究者になるためには
はじめに
ここでは、アカデミック(大学などの研究機関)での研究室について、研究生活の様子をお話しします。
研究室の様子
PIと呼ばれるProfessor(教授)、Associate Professor(准教授)、またはAssistant Professor(助教)のもとに、リサーチスタッフ、ポスドク、テクニシャン、大学院生、学部生が働いていて、3人から15人くらいが一般的です。男女比は半々くらいです。実験をするベンチとデータを解析するデスクがあります。


細胞を培養したり、細菌を培養したりするときに細菌などの混入を防ぐための特別な場所(フード)もあります。危険な試薬や引火性の試薬を調整するときに使うフードもあります。そのほか、研究室のメンバーで共有する機械がたくさんあります。
研究室のテーマに沿ったいくつかのプロジェクトをそれぞれの人が担当してします。一人でプロジェクトを行うことが多いですが、ラボメンバーやときには他のラボの人と協力して研究をすることがあります。
実験
なんといっても主な仕事は実験。ラボや個人のプロジェクトによって、実験は違いますが、DNAやタンパクを扱ったり、細胞や細菌を培養したり、マウスを使うこともあります。ラボ内では白衣を着、眼鏡をかけて、手袋をします。危険な試薬や、血液などの人のサンプルを扱うこともあるので、注意をしています。
研究はまず、論文を読んでこれまでに分かっていることを確認して、新たな仮説を立て、その仮説を証明するためにどんな実験をすればいいか考えます。実験を始める前に、実験ノートに、プロトコールと呼ばれる実験計画を書きます。そのプロトコールに従って実験をします。
数時間で終わる実験もあれば、何日も、何週間もかかる実験もあります。実験の種類にもよりますが、小さなマウスの手術をしたり、1マイクロリットル(1ミリリットルの千分の1)といった少ない量を扱うこともよくあります。手先の細かさ、集中力も必要です。

データ解析
実験をして得られたデータをコンピュータで解析して結果を出します。結果を考察して、次にどんな実験が必要か考えることが重要です。解析にはエクセルやPhotoshopなどを使います。また、特別な解析ソフトを使うこともあります。
ディスカッション
得られた結果と考察をPIや他の研究者と話し合います。オフィシャルには一週か二週に一回、ミーティングがあることが多いです。それ以外の時でも、必要に応じてディスカッションをします。それぞれの研究者が違った知識、技術やアイデアを持っているので、ディスカッションをすることはとても有用です。
論文を読む
実験にはたくさんインキュベーション時間(待ち時間)がありますが、その間はボーっとしているわけではありません。他の実験をすることもあれば、データ解析をすることもありますが、論文を読むのも重要な仕事です。自分のプロジェクトに関する論文、実験法に関する論文のほかに、最近の新しい発見と常に把握しておくことが大切です。
ほとんどの論文は英語です。
PubMedではすべての論文のタイトルと要旨が見られ、キーワードなどで自分の興味のある論文を検索します。私が大学のころは、まだ論文を読みに図書館に行っていたりしましたが、今では全部オンラインで見られます。
論文を書く
なんといっても自分の研究について論文を書いて雑誌に発表することが重要なんです。新しいことでないと発表できません。他の人が同じ研究をしていて論文を発表してしまったら負けです。一番でなければならないんです。研究は競争です。
論文を読むのところでも言いましたが、ほとんどの論文は英語です。たくさんの雑誌があって、みんなも知っているような、Nature、Scienceから、あまり読まれないような雑誌まであります。インパクトファクターという指標があって、論文がどれだけたくさん引用されたかによって雑誌がランク付けされています。
論文を投稿すると1~3人くらいのレビューアーが、その論文を評価します。雑誌に載せていいよ、ここを改善したら載せてもいいよ、または、リジェクト(載せません)ということもあります。レビューアーのコメントをもとに、追加の実験をして、論文を書き直して、再度投稿します。この作業が一番ストレスだとも言えます。
グラントを書く
研究室の研究費の申請です。研究費でラボは成り立っています。研究費が取れないと、ラボで研究ができません。研究費がなくなってラボが存続できなくなったケースもたくさんあります。だから、グラントを書くことはとても大事なんです。政府のグラント、一般のオーガニゼーションのグラントなどがありますが、どちらも研究計画を書いて、論文と同じようにレビューアーが審査をします。研究計画には、これまで得たデータ、今後の実験計画、そしてこの研究がなぜ重要かを説明しなくてはなりません。
ラボセミナー
自分の研究の進捗状況について発表をします。たいていの研究室は、週に一度のミーティングで一回に一人ずつ一時間発表します。最近はパワーポイントで発表することが多いです。コロナ以降、Zoomで発表することも多くなりました。プロジェクトの背景、これまでの結果、ゴール、実験結果、考察、今後の予定などを話します。学会発表ではないので、ネガティブのデーターも示して大丈夫です。ラボのほかのメンバーにアドバイスをもらうことが目的です。
ジャーナルクラブ
日本では抄読会とか呼ばれます。最近出た論文を読んで発表して、みんなに説明するミーティングです。
学会発表
いろんな大学の人たちが集まるミーティングです。国内だけでなく、国際ミーティングもあります。最新の研究を発表しますが、論文を発表することが第一なので、すでに論文になった研究を話すことが多いです。口頭発表とポスター発表があります。たいてい、口頭発表は選ばれた人が発表します。ポスター発表では、決められたスペースに研究データを張って、見に来た人に説明をしたり質問に答えたりします。

アフターファイブ
研究者は朝昼晩関係なく、週末も関係なく、24/7仕事をしています。というのも、研究は一番じゃないといけないからです。競争なので、他の人よりもたくさん、効率よく働かなくてはいけません。まあ、アメリカ人は働かないですが、笑。私が大学院の時とポスドクの時は、朝の5時まで仕事をしていました。徹夜の人もいました。一流の研究者になりたい人は家にいるときも、お風呂に入っているときも、デートをしているときも、研究について考えたり論文を読んだりしています。それくらいのやる気のない人でないとやっていけません。というか、それくらいサイエンスが好きなんです。
給料
他人よりたくさん勉強してPhDのdegreeまで持っているのに、残念ながら給料は安いです。一部の教授たちはもらってますが。しかも、週に40時間以上働いても、残業代や時間外収入はないので、時給にしたら本当にわずかです。アカデミックに比べて、製薬会社や企業の給料はずっと高いです。給料を目的にアカデミック研究者にはなれません。サイエンスが趣味でなければ。
研究者になるためには
理学部や薬学部、医学部などに進学します。大学卒業後は、大学院に行って5-6年さらに勉強して、博士号(PhD)を取る必要があります。その後、アカデミックに残りたいなら、2-3年ポスドクなどをするのがいいでしょう。むかし、100人の博士の話がありましたが、博士号を取ってほんの数パーセントしか研究者として残りません。PIにまでなりたいと思うなら、いばらの道です。能力もですが、努力がものを言います。そのモチベーションは、サイエンスが好き、ということに尽きると思います。
